予報

「……なぁ。コレ何」

摩.利.支が呟く。

「……俺に聞くな」

平謝りする二人の童女をなだめながら不.動が遠い眼差しを浮かべる。

「今日の天気は晴れのち変態……」

「笑えないからやめろ」

阿.弥.陀と弥.勒が机のあっちの端とこっちの端で麗しい笑顔のままえげつない罵詈雑言を浴びせあっている。

観.音は窓際の花瓶の位置が気に入らないらしく自分の立ち位置と合わせてご検討中だ。

薬.師は薬.師で台所を占領して何やら調合しているようだし、家の中は偉大なる仏たちの綺羅綺羅しくも鬱陶しい功徳に満ち満ちていた。

「……不.動。いっそ引っ越そうぜ」

「何ら解決にはならんぞ」

「……この惨状を前に冷静だなオマエ」

「安心しろ。そう見えるだけだ」

よく見れば不.動の体から陽炎が立ち上っていた。

「やっぱ燃やすのはやばいよなぁ……」

「それ以前に効かないだろう」

「……じゃああれか。皆様が満足して自主的にお帰り遊ばすのを待つしかない、と」

「そういうことだな」

二人は改めてため息をついた。

天気よりも変態の予報を出して欲しい。