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創作のメモとか趣味の弓の話とか色々。 予告無しに腐女子発言があるのでご注意。
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風を吸い込んだ。
空が青い。
両腕を広げ、くちびるを開く。
考えるまでもなく旋律が溢れ出し、腕が風を抱く。
風が彼女の漆黒の髪に戯れる。

「――そうか。ありがとう」

ふいにそうつぶやき、娘は身を翻した。
風に乗るかのような速度で、まるで地に足がついていないかのように山を下っていく。
山の麓に広がる村のはずれ、まだ新しい看板を掲げた雑貨屋。
娘は黒髪をなびかせてそこに飛びこんだ。

「ただいま!」

「おう、おかえり」

商品の並べ替えをしていた金色の瞳の青年が笑った。

「分かったぞ。見つけた」

「そっか。――どうすんだ?」

娘の紫色の双眸がわずかに揺らいだが、やがて彼女はまっすぐに青年を見た。

「会いに行く。……私は、謝らねばならぬ。己が憎しみに囚われてあやつの苦しみを分かろうとしなかった。自分だけが不幸だと思いこんでいた。それを、謝らねばならぬ」

静かな声音はしかし、確かな決意を秘めている。
青年の穏やかな瞳が一度まばたいた。

「あいつは、それを断るぞ」

「だろうな。じゃから、私が謝るのだ。私が謝りたいから謝るのだ。――今度は、ちゃんと話がしたいのじゃ。敵とか味方とか、そういうことではなく。ちゃんと、あの男と向き合ってみたい」

風の姫と呼ばれていた、かつて少女だった娘は微笑んだ。

「分かった。じゃあ、仕入れがてら行くとするか。西の更紗が欲しいって注文が多くてな」

「何だかんだ言って客商売が板についておるな」

おかしそうに少女が笑う。
屈託のないその笑顔に、彼もまた同様のそれを返した。

「さ、そうと決まったら準備をしようぜ。手伝えよ? ――羽響」

それは、彼女が封印した名前。
かの大国が滅んで解き放たれた、彼女の証。
彼女が世界を愛する為の名前。
世界の美しさに気付く為の名前。
冬の月の王より贈られた、風の姫の名。

「分かっておるよ。蒼珠」

紅金の魔獣の子の大きな手のひらに、彼女はそっと手を絡めた。





+++





こんなイメージ。
あくまでイメージ

何か定住エンドっぽいよ。
はぐさとは和解出来るんじゃないかな。
さすがに何年かは必要かもしれないけど。
お互いに落ち着いて過去を振り返る余裕が出来てからじゃないかなー。

蒼珠と一緒に風羅に行って名前を戻すような気がする。
躊躇いともつれの象徴たる名前。
それを、風の姫の名に戻す。

架ちゃんのはぐさネタに触発されてみたんだけど…こんなんで如何?






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プロフィール
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カナメトキ
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非公開
自己紹介:
多趣味。
アンテナが多すぎて一番が決められない。

時々ネガティブ。
低空飛行多し。

創作はラノベのようなそうでないような。
堅苦しいファンタジー書きを目指している。

中国やトルコやモンゴルが好き。
歴史学と民俗学のフィールドに生きる。

感情的になりやすくかなりタカ派。
過激な発言で他人を害しやすい。
直さねばとは思うものの、難しい。
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